1.湯川、伏見先生の時代
今朝の朝刊で、正力松太郎氏が原子力平和利用をぶち上げていた頃、表記の科学者は「無言で委員会を去った」という記事を読んだ。理由は「自分の頭で判らないことはついてゆけない」ということだったらしい。この一文ほど科学・技術界の末端に名を連ねるものとして、最近には珍しく癒される話であった。そもそも、科学と工学は全く性格が異なるから、科学者の真摯な態度に工学者が便乗することは不遜であるが、「有用性」を錦の御旗とした工学者でもそれを疑問に思う方は沢山おられた。
こういう陰気な話を公開することは若者にはあまり歓迎されないことは承知している。しかしながら、原発問題で方向感を無くしている現在、マイナスの話を披露することもまた意味のあることであろう。
それは大岡山に原子炉研究所が出来た頃、原子炉制御学を専門とされておられた若き助教授の話しである。日頃からやや内向的な方ではあった。制御工学から移動され新しい講座に就任された後でも構内でよくお見かけしたが、少し暗い感じは否めなかった。その方がある日突然自殺してしまった。当時は「性格に起因する衝動的な自死行為」と解釈され、あまり表沙汰にされる事はなかった。
しかし今考えてみれば、彼の専門が核反応をうまく制御することであったから時代の最先端のテーマであった。核分裂自体の時間関数(モデル)さえ判っていないのに、それを平和利用だからやるのだ、という空疎なテーマに真摯な研究者が付いてゆけるわけはない。
しかし当時私が同じ立場にいても、安全理論の筋道を無視してでもカッポレを踊ることが大人のやることだ、という安全神話にはとてもついてゆけなかったであろう。今思えば彼なりの良心を示した訳だ。
2.ハザードモデルが的中した~~更に今思うこと
その当時完成したばかりの制御工学科の建物には機械系、電気系の教官が共に生活していたが、当時の水道水の状況は最低だった。水は近くの多摩川から取水していたが、多摩川自体、洗濯洗剤で極度に汚染された水であった。公共水道は新築建物屋上のタンクに一旦貯蔵されたが、そのタンクが腐食し、水は異臭がして現在の感覚に翻訳すれば全く飲める状況ではなかった。それを日常的に飲んだ教官の内、3人は数年で発ガンし、残り3人の方は(比例)ハザードモデルに従って早世をされた。このハザードモデルは直接原因を特定していない理論であって、あくまでも統計的な仮説である。しかし本理論は時間軸を変換し、リスクが現実化してゆく過程を注意深く追跡する。「今思えば」という次元の話であるが役には立つ。
参考図書:
拙著:設備安全工学~第3章が比例ハザードモデルの理論と実際
先生のプログで勉強させていただいている、若手?技術者です。ベイズを活用して、電気設備の診断が行えないか勉強中なのですが、5/25のベイズに関する記述が、どーしても理解できません。分からないのは分母です。
返信削除P(B)=0.4x(1-0.8x10-7)=0.4 ←???
分母の考え方、導出を教えていただければ幸いです。
(以下本文抜粋)
・火災発生の確率
直近の統計資料によれば横浜市全体の世帯数は
1,583,344 世帯
また年間の火災発生件数は約80件、従って一世帯当たり、今日一日に火災が発生する確率は
80/1583344/365= 1.38x 10-7 /day
という微細な値である。この確率をAとしよう。
次に火災警報器が火災警報を発する確率は(1)実際に火災があった時、(2)無い時(誤報)
の二つのケースがある。前者を確率Bとする。これは条件付確率であって、その値は検定データが公表されていないので判らないが、設置場所や経過年数にもよるがB=60%、1―B=40%程度ではなかろうか?
さてベイズの確率定理により
P(A|B)=P(B|A)・P(A)÷P(B) となるが、分子のP(B|A)=0.06, 又 P(A)=1.4x10-7
従って分子は0.6x1.4x10-7= 0.8x10-7
又分母は排反事象のみの確率となり P(B)=0.4x(1-0.8x10-7)=0.4
総合的に 0.8x10-7÷0.4 = 2x10-7 と推定される。